8月からは青モノ(イナダ、ワラサ)が熱い!
青モノ特集8月からは青モノ(イナダ、ワラサ)が熱い!
夏真っ盛りと言えば、強烈なひきを楽しませてくれる青モノ!あの青モノ達の熱い季節がやってきました。今回は青モノの中でも、ゲームフィッシングの対象魚として人気の高い、イナダ、ワラサ、ハマチ、メジロなど、若きブリ達を特集します。また、青モノならではのエキサイティングな釣法をご紹介します。
青モノとは
青モノと一言で言っても、海釣りの対象魚となる魚はいくつかあります。アジもそうですし、サバやカツオ、サワラ、カンパチ、ヒラマサ、それにマグロ、基本的に回遊魚はみな青モノです。なぜ青モノと呼ぶのかと言うと、これらの魚は背中の色が青いからなのです。なぜ背中が青いのかと言うと、いつも海の表層近くを遊泳しているため、捕食者である海鳥から見つかりづらくするために海の色に同化させているという話です。逆にお腹は白いのですが、これも同様のことが言えます。海の中の捕食者であるイルカや大型魚に対し、カモフラージュするため、下から上を見上げた時に見える海面と同じ白色に同化させています。青モノと言いますが、青白モノと言ってもいいですね。
実はこの青モノ、分類上みな近縁にあたるのかと思いましたが、結構ばらばらです。マイワシはニシン目、サンマはダツ目、サバやマグロはスズキ目だそうです。ルーツは別でも似たような生活習慣を送ると、姿かたちも似たように進化する収斂作用と言うものが働いているからなんだそうです。そういえば夫婦も似てくると言いますが、これも同じ生活習慣を送っているからなんでしょうか?
若きブリ達
と、話はそれましたが、青モノの中でも定番と言えば、関東で言うイナダ、ワラサ、関西で言う、ツバス、メジロでしょうかね。ちなみにこの魚、全部同じ魚です。いわゆる出生魚なのですが、出世するにしても地域によって呼び名が違ってきますので、かなりややこしい魚です。唯一共通している名前が、出世した最後に付くブリです。会社によって似たようなポジション、例えば課長とか班長、チーム長、マネージャー等、いろいろな役職名がありますが、最後は社長と呼ばれるところは人間界と同じでしょうか。
とりあえず、それぞれの地方における、おおまかなサイズ別の呼び名を下の表に表しました。
サイズ : ~20cm ~ 40cm ~ 60cm ~ 80cm~ |
関東 : ワカシ → イナダ → ワラサ → ブリ |
関西 : ツバス → ハマチ → メジロ → ブリ |
東北 : ツベ → イナダ → アオ → ブリ |
北陸 : ツバエリ→コズクラ→フクラギ→アオブリ→ ハナジロ→ ブリ |
山陰 : ショウジゴ → ワカナ → メジロ → ハマチ → ブリ |
四国 : ヤズ → ハマチ → ブリ |
九州 : ワカナゴ → ヤズ → ハマチ → メジロ → ブリ |
ブリの成長と活動エリア
ブリは南シナ海で生まれ、その後黒潮に乗って北上してくるようです。成長スピードは1年で30cm、2年で50cm、3年で60cm、4年で70cmくらいだそうです。日本周辺に分布するブリは3 つの系群に区分されています。太平洋側には北海道から本州、四国、九州を南北に回遊している系群、日本海側には樺太から北海道、本州、九州西岸を南北に回遊する系群、それとロシアから朝鮮、壱岐・対馬、九州の西側を南北に回遊する系群があるそうです。中でも3つ目の東シナ海を回遊しているブリは大型になることで有名です。壱岐・対馬や五島列島の磯ブリは有名ですね。 日本近海におけるブリの分布 出典FRA
ちなみにブリもアジと同じく回遊をやめて瀬付きになるブリがいるそうです。アジ同様、瀬付きになったブリは、回遊個体よりもより黄色がかった体色になるそうで、そういうブリは「キブリ」と呼ぶそうです。しかし、アジの場合と違って、体は逆に痩せてしまうようです。瀬付きブリは南日本に多いそうですが、痩せたブリじゃブランド化は無理かな?
ナブラ撃ち
さて、次にブリの狙い方ですが、ブリと言ってもこの時期に狙いやすいのは、先ほど挙げたイナダ、ワラサ、またはハマチ、メジロクラスですね。釣り方としては、カッタクリやウィリー、ジギング等と様々ですが、今回焦点を当てたいのが「ナブラ撃ち」です。
これからの季節は、イナダ、ワラサなどのナブラがよく沸きます。「ナブラ撃ち」と言うのは、ナブラを見つけて、すかさずルアーやジグをナブラに向けて連射する釣法です。ナブラとは、青モノの魚が水面近くに群れている小魚を、我先にとバシャバシャ跳ねて捕食している状況を言います。ベイトとなる小魚はカタクチイワシやイカナゴなどです。
このナブラ、腹を空かせた青モノたちが、群れになって狂乱状態でエサを食べているのですから、釣れないわけはありません。しかし、ナブラはすぐに移動してしまったり、突然終了する短期決戦の釣りなので、ナブラを見つけたら、こちらも必死でルアーやジグのキャストを繰り返さなければならないとても忙しい釣りです。
これからの季節、ナブラを沸かす青モノは若きブリ達だけではありません。その他、ソーダガツオやサバ、サワラ、ヒラマサ、カンパチ、シイラ、またはヨコワやメジなど若きマグロ達も沸きます。
下の動画は山形県は飛島周辺の海域で、発生したメジクラスのクロマグロのナブラです。エサとなるベイトを追いかけてマグロの巨体が水面をジャンプしています。ベイトはアジかマイワシでしょうか。勢いあまって、ベイトが空中に弾き飛ばされるシーンも見られます。
ナブラが沸く条件
ちなみにこの「ナブラ撃ち」ですが、ボートで沖に出れば必ず見つかるものとは限りません。引き縄の漁師さんやこれを専門にやっている遊漁船の船長さんのように、頻繁に海に出ていつも探しているぐらいでないと、ナブラがいつどこに沸くのかを予測するは不可能です。よって、この釣りは基本的にはその日のメインの釣りがあり、その釣りをしながら、ナブラを見つけた時にすかさず突撃すると言った、サイドディッシュ的な釣りになります。
ボートで沖に出て、今日の釣りをしている最中、ちょっと食いが渋って手すきになった時にでも、双眼鏡で遠くの海面を見てみるのもいいでしょう。もしかしたら巨大な鳥山を発見するかもしれません。
しかしながら、この少々運まかせ的なナブラ撃ちですが、やはりナブラが湧きやすい条件と言うものがあり、そこのところを押さえておけば、ナブラ遭遇の確立を高めることができます。
1.沿岸寄り
ナブラは基本的にある程度水深の浅い沿岸海域に発生します。というのも、青モノに追われた小魚の群れは水深が浅いと下方向に逃げることができなくなるため、上方向に追い詰められて、水面付近に留まってしまうからです。
2.穏やかな水面
海が荒れている時や雨が降っている時にはあまり鳥山を見かけません。海が荒れているとベイトが接岸しないのか、または水面が荒れているためベイトの群れを見つけにくいのか、詳しいことはわかりませんが、ナブラが発生するのは決まって水面が穏やかな時です。
3.明け方
イナダやワラサ、ブリの場合、摂餌行動は明け方に集中します。一日に摂るエサの半分を朝に摂って、その後昼頃には摂餌量が減り、夕方頃にまたエサを摂り、夜間はまったく摂らないようです。
4.根や瀬周辺
根や瀬がある場所は、ベイトとなる小魚の群れが滞留しやすいため、その付近でナブラが立ちやすいです。海底地形図で根や瀬のある場所や、急に浅くなっている場所を確認しておけば、海に出てからナブラを探す場所の見当をつけやすくなるでしょう。
5.海水の透明度
また、海の水も澄んでいる時のほうが、ナブラが湧きやすいと言います。よく低気圧が近づく前の日にイナダやワラサが釣れますが、低気圧が近づくと雨が降り、濁りも入るので、ベイトとなる小魚を見つけにくくなるということを魚もわかっているのかもしれません。よって、低気圧が近づく前の、晴天が続いて水が澄んでいる時にナブラが湧きやすくなるのではないでしょうか。
6.プランクトン
青モノのエサとなる小魚のエサはプランクトンです。よってプランクトンが発生しやすい場所に小魚が集まり、そこに青モノも集まります。そのような場所はどこにあるのかと言うと、わかりやすいのは潮目・潮境です。潮目にはよくゴミも浮いていますが、プランクトンも集まりやすいです。潮目付近に海鳥が集まりだしたら、ナブラが沸く可能性が高いと思って良いでしょう。また、川の河口近くもプランクトンが発生しやすいです。
以上のことを総合すると、ナブラに遭遇するには、これからのシーズンで、晴天が続き、水の濁りもなく、風もなく波もない明け方の、川の流れ込みがある沿岸付近で、海底に根や瀬があって潮目が発生しているような場所となります。
沖合いに比べ、沿岸近くはだいたい同じところにナブラが発生する傾向があります。沿岸近くでナブラを見つけたら、「釣りナビくん」などのGPSツールでそのポイントを記録し、発生時間や天候、潮回り、水温等、各種条件も同時に記録しておくと良いでしょう。次回また同じ条件が重なれば、同じ海域にナブラが沸く可能性は高いに違いありません。
鳥山
ナブラ撃ちの第一歩は「鳥山」を見つけることです。よく海に行くと、遠くにカモメなどの海鳥の群れが海面近くをぐるぐる飛んでいるのが見られますが、あれが「鳥山」です。鳥山とは海鳥が水面下にいる小魚を捕食している光景です。海鳥の群れがいれば、その下には小魚の群れが、そしてその下には小魚を狙う青モノが確実にいます。なので、ナブラ撃ちをするには、まず「鳥山」を見つけなければなりません。
このナブラのマーカーとなる鳥山についてですが、鳥が集まっていれば必ずナブラがあると言うわけではありません。ナブラが水面下に沸いている場合の鳥の飛び方があります。鳥が海の上に集まっているのだけれども、ただぐるぐる飛んでいるだけの場合、魚の群れはまだ水面から少し深いところにいます。その鳥が水面近くに急降下したり上がったりを繰り返している場合や、水面に降りて羽を広げてバシャバシャやっているのは。ナブラが沸いている証拠です。近くまで行けば水面が魚でざわついているのが見えるはずです。
次の動画は岩手県三陸沖で撮影したイナダのナブラです。かなり広い海域で鳥山が立ち、あちこちでボイルが見られました。海面には逃げ場を失ったカタクチイワシの団子がところどころにできており、食べられたイワシの鱗がキラキラとそこらじゅうに漂っていました。
ちなみに海鳥が海面に集まっているけれども、みんな静かに水面に浮かんでいる場合があります。これは魚が深く潜ったため鳥が魚群を見逃してしまい、しょうがないからちょっと一休憩しているところです。近くにナブラが沸けば、またすぐにそこめがけて飛んで行きますのでしばらく様子を見ましょう。しかし、魚は潜ったままナブラの再開がないこともあります。その時は鳥も休憩モードからそのまま解散してしまいます。そういう時はどうしようもないので、我々も「じゃ、お疲れー」と言って解散しましょう。
また、鳥山の立たない小規模のナブラもよくあります。これはナブラと言うよりもボイルと言った方がいいのかもしれませんが、底モノ釣りなんかをしている時に、近くで「ジョボッ」「ジャバッ」って聞こえることはないでしょうか。その時は青モノが単発的にベイトを追っているシーンです。そんな時もすかさず、あらかじめ用意してあったナブラ撃ち用ロッドに持ち替え、すかさず波紋の残った方向にキャストしてみて下さい。運がよければガツンときます。ちなみに「ジャッポーン、ジャッポーン」って音は、ボラが能天気にはねているだけなので、無視してください。
ナブラ撃ちの注意点
それからシビアなことを言うようですが、ナブラが沸けば必ず入れ食いになるとは限りません。沸いているナブラの真ん中にルアーを投げても釣れないことが良くあります。そういう時は、投げる方向を変えてみてください。ナブラのど真ん中よりもナブラの周辺、特にナブラが移動している進行方向の少し前に投げるといいようです。
またルアーやジグのチョイスも大事です。ポッパーやスプラッシャーなどのトップウォーター系がいい時もあれば、ジグやバイブなどを少しフォールさせてミドルレンジを引くのがいい時もあります。釣れない時は一つのやり方で粘るのではなく、ルアーやルアーの引き方をどんどん変えてみて下さい。ナブラ撃ちは瞬間の勝負です。
また、ナブラに近づき過ぎると、魚が驚いて潜ってしまいます。そうなると元も子もないので、あまりボートで近づかず、できるだけ離れたところからキャストするべきです。しかし、ナブラによっては潜りやすいのと潜りにくいのがありますし、手持ちタックルでのルアーの飛距離との関係もありますので、これはケースバイケースで考えて下さい。
今回の特集はいかがでしたでしょうか?きっとあなたもナブラを撃ってみたくなったに違いません。上の動画にもあるように、場所によってはクロマグロのナブラ撃ちができるところがあります。
このナブラ撃ちは、海釣りの中でも数少ない魚を見て釣る釣りです。普通「見釣り」や「サイトフィッシング」と言うのは、見えている魚にそーっと忍び寄って、こちらに気づかれないように、エサなりルアーなりを目の前に持って行く釣りですが、ナブラ撃ちはそんなのはあまり関係なく(本当は関係あるのですが)、見えている相手に突撃していくような釣りです。
しかも短期決戦なのでちょっとタイミングを逃せばまったく釣れなく、うまく当たれば爆釣する一発勝負です。ナブラを目の前にすると、負けてなるものかと、こちらのテンションもマックスです。
ガツンときたら強引に抜き上げ、またすかさずキャスト、忘れていた狩猟本能が目を覚まし、アドレナリンも全開、鳥も魚も人間も祭り状態です。ぜひ今年は夏の一大イベント、青モノのナブラ撃ちに挑戦してみてください。