9月、10月からはカワハギが熱い!
カワハギ特集9月、10月からはカワハギが熱い!
暑かった夏も過ぎると釣りも後半戦です。かんかんに照り付ける夏の日差しの中、海に繰り出すのも悪くないですが、海の上でも涼しい風が吹き始める今頃からの方が、体力的にも釣りがしやすいのではないでしょうか。
今回はそんな季節にうってつけの釣り、カワハギ釣りを特集します。
カワハギはフグ並みにおいしい魚
カワハギと言えば、その淡白で上品な味わいが人気の魚ですが、あの白身でぷりぷりとした食感はどことなくあの魚に似てはいないでしょうか。あの魚とは、そう、フグです。カワハギはフグ目に属する魚ですので、その身質もフグに似たまぎれもない高級魚です。刺身や鍋、から揚げ等、調理法もほぼフグと同じです。しかし、カワハギとフグには大きな違いがあります。それは何か、もうお気づきですね。それはカワハギには毒がない!ということなのです。毒がなければ自分で好きなようにさばいて食べることができます。フグはフグ調理の免許を持っている人でないと調理することができません。カットウ釣りで有名なショウサイフグというフグがいますが、船釣りで釣ったこのフグも、免許を持った船宿の人にさばいてもらわないと食べられません。
カワハギでは食べられてフグでは食べられないもの
毒がないおかげで、フグでは決して味わうことのできない食べ方がカワハギならできます。そう、それは「肝あえ」です。食べられたらさぞかし美味しいとは思うのですが、フグの毒は生殖腺や肝臓に集中していますので、肝臓である「肝」を食べることができません(最近は陸上養殖で無毒化させたフグの肝を出しているお店もあるようですが)。
このカワハギの肝あえは、生の肝を包丁で叩いて醤油に溶かし、その肝醤油にカワハギの薄造りをつけて食べる至ってシンプルな食べ方です。この淡白なカワハギの身に、トロッと濃厚な肝醤油の食べあわせがなんとも言えず最高にキモイ!じゃなかった最高にウマイ!です。もう酒の肴にバッチグーですね。
なんで肝ってあんなに酒に合うのでしょうか。塩辛にするイカのワタや、あわびのとしろ、あんきも、フォアグラやレバー等、みな肝です。その中でもカワハギの肝は極上です。他の二つはわかりませんが、世界の3大ウマ肝に入るに違いありません!
ちなみに、カワハギの肝あえは鮮度が命です。スーパーで売られているカワハギは、はたして肝あえにして食べられるほど新鮮かどうかわかりませんが、鮮度が大事であるのならば、やはり自分で釣ってくるしかないでしょう(って、いつもの落ちですが)。夏の産卵期が終わった後、秋から冬にかけてカワハギは栄養を付けるので、肝がパンパンに膨れていきます。これをキモパンなカワハギというらしいです。最高鮮度のキモパンでキモウマなカワハギをゲットできるシーズンはこれからです。
ソウシハギについて
ここで注意点があります。
カワハギの仲間にウマヅラハギという魚がいますが、この魚もカワハギと同様においしい魚で、肝あえもグーです。カワハギ以上によく釣れる魚で、西日本の方ではとてもポピュラーな魚です。ところが最近、温暖化の影響かはわかりませんが、ウマヅラハギに似たソウシハギという毒を持った南方系の魚が本州付近まで北上してきているとの報告があります。
このソウシハギの毒はパリトキシンと言って、フグ毒で有名なテトロドトキシンの約70倍にもなる猛毒なんだそうで、カワハギやウマズラハギと間違ってソウシハギを食べることのないよう注意が必要です。
このパリトキシンと言う毒は、もともと海の中のある種の藻類が作りだしたもので、その藻類をプランクトンが食べ、そのプランクトンをイソギンチャクが食べ、そのイソギンチャクを魚が食べを繰り返し、濃縮されてその魚が毒化するそうです。 同じようにイソギンチャクを食べる他の魚、例えばアオブダイもこの毒を持っている事があるそうです。ただ、このソウシハギは身には毒が無いそうなので、身の部分は食用にはなるらしいですが、興味半分に食べてみようなんて気は起さない方がよさそうですね。
ちなみにトラフグとかは身がとても美味しいので、内臓に毒があると知りつつも食べずにはいられない。→リスクを冒しながらも、ついつい食べてしまう。→無視できない件数の中毒が発生する。→訓練を受けた人のみがさばいたものしか食べることができなくなる。の流れで、ふぐの調理師免許と言うものができたんじゃないかと思います。ソウシハギには調理師免許はありませんが、そのリスクはフグの70倍ですから、間違っても自分で捌いて食べようなんて思わないように。 どっちにしろ、ソウシハギの身はカワハギほどは美味しくないそうですので、リスクの割には得るものは大したことなさそうです。
ソウシハギはもともと大きくなる魚なのですが、これまで本州では小型のものしか見る機会がなかったようです。これらはほとんどが死滅回遊と言って黒潮に乗って南から流れてきたものなので、本来であれば越冬できずに死んでしまう運命にありました。ところが最近、死なずに生き延びている大型のものが本州でも見られるようになったそうです。
また、ややこしいことに、ウスバハギという毒が無く食用にされるカワハギの仲間が他にいます。タイ釣りなんかでたまに外道として釣れたりしますが、ソウシハギもこの魚によく似ています。カワハギやウマズラハギと違って、この2種は共に大型になる魚なので、いつも釣れるウスバハギの中にソウシハギが混じるとあまり見分けがつかない可能性もあります。「ちょっと見ためが違うけど、せいぜいオスかメスかの違いだろう、いいや食べちゃえ」なんてこともありそうなので、十分ご注意を。
画像上 ウマズラハギ
画像中 ウスバハギ
画像下 ソウシハギ
カワハギはエサ盗り名人
さて、カワハギ釣りですが、釣り師の間ではとても人気が高い釣りです。それは味が良いという理由だけではなく、その釣趣にあります。カワハギはエサ盗り名人の異名を持つ魚で、数釣るには経験とテクニックが必要となります。運よりも腕の差が釣果に直結する魚ですのでとても奥深い釣りと言えるでしょう。
カワハギ釣りと言えば、乗り合いや仕立てなどの釣り船で釣るのが定番です。釣り船で釣るポイントはだいたい決まっています。実はこのカワハギという魚、好奇心が強いわりには頭のいい魚なので、遊漁船がいつも来るような場所のカワハギは、エサ盗りテクニックにもかなり磨きがかかっています。なので、遊漁船で釣る場合は初心者と上級者では釣りあげる数に開きが出てしまいます。
初心者のカワハギ必釣法
しかし、初心者だからと言ってあきらめてはいけません。初心者でも勝ち目のある釣り方があります。それはまだ水が温かいこの時期のみに有効な、小型ボートを使った釣りです。
カワハギは夏場、産卵のために浅場にやってきます。カワハギ釣りと言えば秋冬の涼しいシーズンの釣りですが、まだ水が温かいこの時期は遊漁船が入ってこれないような浅場にまだ多くいます。そこで小型ボートの出番となるわけです。船外機付きのボートの方が広くポイントを探せて有利ですが、今の時期なら手漕ぎボートでも狙えるところにカワハギはいます。カワハギはこの後、だんだんと水が冷たくなるにつれて沖合いの深場に移動してしまうので、浅場で釣るのなら今がチャンスです。
ボートはレンタルボート屋さんで借りれます。免許不要の2馬力の船外機を付けているボートもありますし、手漕ぎボートもあります。
また、今はカートップボートやゴムボート、シーカヤックなど、一人で持ち運びできるタイプのものがいろいろ出ています。カワハギ以外の釣りにも活用する機会はたくさんありますので。予算の許す範囲でマイボートを検討してみてもいいかもしれません。
初心者でも釣れるわけ
カワハギ釣りで有名な海域であっても、遊漁船が入ってこない浅場であれば、魚がスレていません。また、浅ければ出てるラインも短いため、初心者でもカワハギの微妙なアタリを取りやすくなります。よって、エサをとられる前にフッキングさせる率が高くなります。さらに、産卵に来ていた魚なので、型が良いものも釣れます。ですので今の時期は初心者の人に是非チャレンジしてもらいたいシーズンです。
カワハギの居場所
さて、カワハギのボート釣りですが、まずはポイントを見つけましょう。ボート釣りは自分が船長なので、自分でポイントを見つけねばなりません。
カワハギは、その体型を見ればわかるように、遊泳力があまり強くない魚なので、根魚の類に入ってよいかと思います。中層あたりに浮いてくる場合もありますが、主に海底近くでエサを摂っている魚です。エサはシロギスと同様に、砂の中に潜っているゴカイの仲間や貝類、小さいカニやエビ、岩場に付着している生物などです。群れを作らずに単独であっちやこっちと、せわしなくエサを探しています。海に潜っていると底が砂地なんかの場所では、カワハギが底の砂に口から水を吹きかけて、露出したエサをついばむ姿が良く見られます。
カワハギは砂地や岩場など、どちらにでもまんべんなくいる魚ですが、良いポイントとなるのは砂地の中に岩や根が点在するところや、砂地と根の際付近となります。シロギスのポイントとかぶることが多く、シロギスの仕掛けにカワハギが釣れることも良くあります。シロギスは砂地と根の砂地側、カワハギは根側に多くいる感じでしょうか。
ポイントの見つけ方
そのような砂地と根の際を探すには魚探がなくとも、水が澄んでいて水深10m以下の浅いところであれば、ボートの上から見ればわかります。砂地は明るい色、岩場や根は暗い色をしているのでわかりやすいと思います。箱めがねで水中を覗けばもっと良くわかるでしょう。
水深が深い場合や、水の透明度が悪い時は、上から見てもわからないので、竿から伝わってくるオモリの感覚で判断します。オモリを水底に落として底をトントンと小突けば、砂地ならばやわらかい手ごたえ、岩場であればごつごつとした手ごたえが伝わってくるはずです。
よって、最初はアンカリングをせず、流し釣りをしながらポイントを探すと良いでしょう。オモリで底を小突くのは、カワハギを誘うためのテクニックでもあります。 流し釣りをしながら底に当たるオモリの感覚に変化があり、なおかつ実際にカワハギが釣れたところや、気が付いたらエサがなくなっていたような場所は、カワハギの良いポイントと思って間違いないでしょう。すかさず、「釣りナビくん」などのGPSツールでポイントを登録しましょう。
ひと流ししてみた後は、一番よさそうな場所に戻って、うまくそのポイントの上にボートが位置できるよう、ロープの長さを考えてアンカーを打ちましょう。
ボート釣りのメリット
釣り座が決まりましたら、さっそく実釣スタートです。浅場のボート釣りのメリットとして特筆すべきものに「コマセの効果」が挙げられます。カワハギの船釣りではコマセを撒くなんてことはできません。この釣り方は浅場のボート釣りだからこそできる芸当です。潮の流れがあまり速くなければ、海に直接アミエビなどのコマセを撒いてもかまいませんし、集魚剤などを使い、団子状にしたものを放り込んでも構いません。またサビキのカゴにコマセを詰めて、他の竿にそのカゴだけ付けて、底近くの水中にぶら下げるのもよいでしょう。
カワハギは群れを作らないので、海の中に散在しています。しかし、コマセを撒くことによって、その辺にいたカワハギが我先にとどんどんエサの周りに集まってきます。ここからがカワハギ釣りの勝負となるわけです。
カワハギの口
カワハギの口はおちょぼ口です。他の魚と違って、エサをガバッと咥えたり、丸呑みするようなことはせず、一口ずつ、エサをちょこちょことついばむ、とても上品な食べ方をする魚です。ここがカワハギ釣りの難しいと言われる所以であり、そんなカワハギをまんまと釣ってやろうと、釣りキチ魂に火をつける理由でもあります。
カワハギのアタリ
エサは主にアサリの剥き身を使いますが、ゴカイの類やオキアミでも釣れます。エサの食べ方としては一口ずつ食いちぎるか、一瞬吸い込んでは吐き出し、吸い込んでは吐き出しを繰り返しながら食べていきます。
カワハギは背ビレ腹ビレ胸ビレを使って前後上下左右へと、まるでヘリコプターのように自由に動くことができます。エサの一部をちょこっと噛んで、後ろにバックして噛んだ部分を引きちぎるなんて芸当は朝飯前です。
アタリは非常に微妙で、向こうアワセでハリがかりすることもほとんどないので、いつの間にかエサがなくなっているのはしょっちゅうです。竿は微妙なアタリが伝わる、穂先の繊細なカワハギ専用の竿を使うのがベターです。
アワセのタイミング
そんなちょこちょこ食いのカワハギですが、ハリ先が口の中に入る瞬間があります。そこですかさずアワセを入れ、ハリがかりさせるのが、カワハギ釣りの醍醐味といえましょう。しかしながら、このアワセのタイミングや、アワセを入れてフッキングさせるまでの釣りパターンを自分なりに会得するには、やはり場数を踏まなければなりません。
カワハギは誘って釣る釣り方です。オモリが着底した後、竿先をすばやくシェイクする「タタキ釣り」、ラインをたるませてエサを底に這わす「たるませ釣り」などいろいろな誘いパターンがあります。これらの釣り方を自分なりに組み合わせ、自分なりのカワハギ必釣スタイルを確立して下さい。それらの誘い方に関しては詳しく解説しているサイトがいろいろありますので、そちらを参考にして下さい。
考えてみればカワハギ釣りってヘラブナ釣りに似ているかもしれませんね。ヘラブナ釣りはその場に応じてエサの配合を組み合わせ、アタリを取るには、あのながーいウキの微妙な動きから判断します。どちらもマニアックな釣りですが、アタリの取り方に関しては、相通じるものがある気がします。釣りで一番興奮するシーンって自分の狙い通りに「よし、キターッ」って瞬間にありますよね。
仕掛けについて
今ではカワハギの仕掛けも出来合いのものがたくさん出ていますので、いろいろと試してみるのが良いでしょう。カワハギの好奇心にアピールするため、みな結構カラフルです。金ピカの集魚シートを取り付けたりする人もいますし、仕掛け作りもカワハギ釣りの面白さの一つです。
今回のカワハギ釣り特集はいかがでしたか。
結構ハードルが高い釣りと思われているカワハギ釣りですが、今このシーズンだからこそ、初心者でも楽しめる釣り方があるということがわかって頂けましたでしょうか。
自分で釣った鮮度のいいカワハギを肝あえにして一杯、たまりませんね。
では、くれぐれも尿酸値に気をつけて、カワハギ釣りを楽しみましょう!